パワーが最大になる点ってどこにある? ~スイートスポット③~
スイートスポット③とは何か?
皆さんは、ラケット面のどこでボールを打てばパワーが最も出るか考えたことはあるでしょうか?
テニスをプレーする人にとって、少ない力でできるだけ強力なパワーが出せるようになることはかなり大切なことですよね。
さて、パワーが出るとはどういうことでしょうか?
その答えは、ボールのスピードが出るということです。
ボールのスピードが最大になるところ、つまり最もストリングが反発してくれるところがスイートスポットであると言えそうですね。
これが、スイートスポット③の正体というわけです。
スイートスポット③はどこにある?
では、実際のラケットにおいてスイートスポット③(パワーが最大)はどこにあるのでしょうか?
たいていのラケットでは、面の中心よりも、グリップに近い場所にあることが多いです。
なんで面の中心ではないの?と思う人もいるでしょう。
それは、人間がラケットのグリップを持っている状態を考えれば理解することができます。
ボールを打つときは、ラケットのヘッドは固定されていませんよね。
ということは、ボールがラケットの面にあたった衝撃で、ラケットのヘッドは自由に振動してしまうということになります。
それに比べて、グリップの部分はプレーヤーがしっかりと握っているわけですから、グリップの部分は揺れ動くことはありません。
もし、同じようにヘッド部分も固定されていれば、ラケットは真ん中のを対称に振動することになるので、最もソフトでしなやかに動くことができる面の中心が、最大のパワーを出せる点ということになります。
ですが、実際はラケットのヘッドが振動してしまうため最大のパワーを出せる点は、面の中心よりもグリップ側にずれてしまうのです。
その理由は、ラケットに弾力性があるからです。
ボールを打つときのエネルギーが、ボールに伝わる代わりにラケットの変形に使われてしまうと、ボールにエネルギーを伝えることができませんよね。
ボールの打撃点が、グリップ側に近いほど、ラケットが実質的に硬くなってラケットの変形に使われるエネルギーが減ります。
その分、返球されたボールに伝わるエネルギーが大きくなり、結果的により大きなパワーが出せるということになります。
以前こちらの記事で、「ストリングを弱く張った方が、ストリングが一度ボールのエネルギーを吸収してすぐにボールに戻すことで大きなパワーが出せる」と書いたと思います。
そう考えると、この理論は間違っているように考えられるかもしれません。
なぜラケットの弾力性を利用して、大きなパワーを出すことはできないのでしょうか?
その答えは、タイミングにあります。
ボールは、約0.005秒間ストリングと接触し、ストリングの反動で飛び出します。
その一方で、ラケットが変形してからもとの位置に戻るのにかかる時間は0.015秒です。
ということは、ラケットがもとの位置に戻った時にはすでにボールはラケットから離れてかなり前方を飛んでいます。
なので、ボールにラケットの変形で吸収されたエネルギーを再び伝えることができないのです。