ストリングは何ポンドで張るのがいいのか
皆さんは、ラケットのガットを張り替えるときに何ポンドで張ればいいのか、悩んだりすることはありませんか?
ストリングを張り替えるとき、とりあえず以前張っていたテンションで張るようにお願いする人や、お店の人に相談してちょうどよいテンションを提案してもらうという人も多いかもしれません。
ですが、スクールの先輩やお店の人など誰に相談しても的確な助言が返ってきたという人はあまりいないでしょう。
なぜなら、いくら経験豊富なお店の人といっても、お客さんの感覚まではわからないですし、何ポンドで張ればいいのか正確なことは本人が何度も試してみないとわからないからです。
そもそもラケットによって、フェイスの大きさも違うし、ストリングの間隔、本数にも差があるので一概に何ポンドならよいかとは決められないわけです。
でも、何ポンドで張るのがいいかわからない。という結論では困ってしまいますよね。
というわけで、今回はストリングのテンションを変えることによって生まれる違いについて説明していきたいと思います。
ちなみに、ボールを弱く打つときは面の変形は小さいので、ストリングのテンション・ストリングの間隔が関係してきますが、ボールを強く打つときは、ストリング自体の変形がより大きくなるため、ストリング自体の弾性がより影響するようになります。
Contents
フレーム幅とストリングのテンションの関係
ストリングを張ったラケットの面を一定の力で押してどれだけラケットの面が変形するかという実験が行われました。
その結果、ラケットの面が変形する量をできるだけ同じにするためには、フレームの幅がでかくなればなるほど、張るストリングのテンションを高くすればよいということが分かりました。
具体的な例として、フレームの幅が8インチのラケットに50ポンドでストリングを張っていたAさんがフレームの幅が9インチのラケットに変えて、打感は元のラケットになるべく近づけたいと思っているとしましょう。
8インチが9インチになったのですから、12.5パーセントフレームの幅が広くなったということですね。
この時、Aさんは50ポンドを12.5パーセント強くしたおよそ56ポンドでストリングを張ればよいということになるわけです。
もちろん、ラケットを変えたわけですから、ストリングのほかにもフレームの硬さなど様々な要因が変わっているので完璧に元のラケットと同じようになるわけではないですが、このような方法を使うことでできるだけ打感を近づけることができるのです。
ストリングの反発力
なんで、ラケットにはストリングを張るのだと思いますか。
それは、ストリングの反発力を利用してただの硬い面よりも小さい力で速いボールを打つことができるようにするためです。
ストリングのテンションを強くするとどんどん硬い面になってくるので反発力は小さくなっていくわけです。
ストリングはボールが当たってゆがむときにエネルギーを蓄え、元に戻ろうとするときにボールにそのエネルギーを伝えているので、テンションが低い方がストリングはよく変形するためより反発力が強くなるということですね。
もちろんテンションが低すぎてもだめですけどね。
つまりまとめると、軽い力で強いボールを飛ばしたい人はテンションを下げるべきで、逆にテンションを強くするとボールの飛びは弱くなっていくということです。
では、なぜストリングを弱く張らないのでしょうか?
プロのテニスプレーヤーの中にはテンションをかなり高く張っている選手もいます。
たとえば、イギリスのアンディー・マレー選手なんかは62ポンドでストリングを張っているそうです。
私は普段50ポンドで張ったラケットを使用しているのでかなりテンションが高いと感じますが、テンションをあえて高くしているということはテンションを高くすることにもメリットがあるのかもしれません。
その答えは、「テンションを上げたほうがボールをコントロールしやすくなるから」です。
本当にコントロール性能が上がるのか疑問に思う方もいるでしょうから、いくつか根拠を上げていきたいと思います。
- まず、テンションが低いとガットのゆがみが激しくなるのでボールがラケットの面から離れるときにボールの方向がぶれやすくなる。
- また、テンションが低いと、ストリングがゆがみやすいわけなので、相手のボールの速度によって、ゆがむ度合いが変化しやすくなってしまいます。その結果、自分は同じように打っているつもりでも、相手のボールによってどこにボールが飛んでいくのかが変わってしまう可能性があります。
- さらに、ストリングがゆがむということは、テンションが高い場合と比べて、ボールとラケットの面との接触時間が長くなります。ということは、その分だけ、ラケット自身のねじれが大きくなりボールの打ち出す角度のずれが大きくなってしまいます。
- 逆に、テンションが高いとストリングのほうは硬くなるので、インパクトの時にボールのほうがつぶれますね。そうすると、ラケットの面とボールの接触面積が大きくなり、コントロールがしやすくなります。
このように、多くの理由からストリングを張るテンションを強くした方がボールのコントロールはしやすくなるのです。
ボールとラケットの接触時間
テンションが弱いほど、ボールとラケットの接触時間が長くなります。
また、ストリングに加わる力が強いほどストリングは固くなることがわかっているので、ボールを打つ力が強いほど、ボールとストリングの接触時間は短くなります。
ラケットとボールの接触時間は実際にプレーにどのように影響を与えるのでしょうか。
テンションを少し弱くしてみたからといって、ボールとの接触時間はほんの少ししか伸びません。
ですが、接触時間がほんの少しでも伸びることによって、ボールがラケットに触れながら移動する時間は伸びるので、その間にコースがずれてしまいコントロール性能が落ちてしまうことが考えられます。
このほんの少しの時間は、人間の反応できる時間よりも短く、ショットを打ったときに違和感を感じても、脳が状況を理解したときにはもうボールはとっくにラケットを離れてしまっているので、接触時間を人間の技術によって短く修正することはできません。
また、接触時間が伸びるということは、各瞬間における衝撃の力は小さくなるため、ボールを打っている人はテンションが高いものを使っているときより打感が柔らかくなったと感じることができます。
ですから、手首が痛くなってしまったり、テニスひじになってしまった人はストリングのテンションを少し落としてみると楽になるかもしれません。
まとめ
今回は、ストリングのテンションを変えることでラケットの性能にどのような影響が出てくるのかということを比較的理論的にお話ししてきました。
ですが、いくら理論的なことがわかっても、実際にプレーするのは人間です。
ということは、やはり何回かストリングのテンションを変えていって、自分に本当に合うテンションを探していくということが大切になってくるのです。
皆さんも、今回の記事を参考にしてぜひ自分に合うテンションを探してみてください。